top of page

睡眠不足の恐怖 ~筋肉に与える悪影響~



皆さんは普段何時間くらい眠れていますか?十分な睡眠時間を確保できていますか?

「寝る時間を惜しんで、仕事をしている。」

「スマホに夢中になって、ついつい寝る時間が遅くなってしまう。」

こんな理由で睡眠が不足している方は少なくないと思います。


NHKの国民生活調査によると、1960年には約70%の人が夜10時に眠っていたのが、2010年には24%に激減し、睡眠時間は60分も少なくなっています(図1)。


図1:日本人の睡眠時間の推移

(引用:https://www.tsukurupajama.jp/pajamapedia/sleep/3604)


社会の夜型化または24時間型化など、生活様式が近年になって劇的に変化したことが、睡眠時間の短縮をもたらしている要因だと考えられます。


「睡眠が大事なのはわかっているけど、体の調子も保てているし、多少睡眠不足でも大丈夫でしょ。」そんな風に考えている方々、睡眠不足は健康に関する多くの問題を引き起こすことをご存知でしょうか。

それらの問題の中でも、今回は睡眠不足が筋肉に与えるネガティブな影響について検討した最新の研究をご紹介します。


Sancerら(J Physiol, 2020)は、健常男性24名を対象に睡眠不足がタンパク質の合成に与える影響について報告しました。


全対象者は、8時間睡眠で2日間過ごしたのち、以下の3グループに分けられ、それぞれの条件で5日間過ごします(図2)。

図2:グループ分け


筋タンパク質の合成を介入前後で比較するために、筋生検を介入前(3日目)と介入後(8日目)に行いました(図3)。




図3:実験手順

*高負荷インターバルトレーニングは、自転車を60秒間ほぼ全力で漕ぎ続ける

 セッションを10回行っています。セッション間の休憩は75秒としています。


結果として、睡眠制限群は通常睡眠群と比較して、筋タンパク質の合成がおよそ19%も低下していたことがわかりました(図4)。



図4:筋タンパク質合生速度(通常睡眠vs睡眠制限)


著者らは、筋タンパク質の合成低下が続けば筋肉量が減少するため、慢性的な睡眠不足は筋肉量の減少を招く危険性があると考察しています。


また、著者らはこの研究におけるもう一つの興味深い結果として、睡眠制限+運動群の筋タンパク質合成が、睡眠制限群より有意に高値を示し、通常睡眠群と比較しても有意差がなかったことを挙げています(図5)。


図5:筋タンパク質合成速度(通常睡眠vs睡眠制限vs睡眠制限+運動)


この結果から、睡眠不足の人にとって高負荷のインターバルトレーニングは、筋力を維持するために有効な手段であると著者らは述べています。


一方で見方を変えると、睡眠不足の人が高負荷のインターバルトレーニングのような激しい運動を行っても、運動をしていないのに睡眠をしっかりとっている人と同程度の筋タンパク質合成しか起きないとも捉えられます。


せっかく運動を頑張っていても、寝不足のせいで効果が薄くなってしまうのは残念ですね。


今回の研究では検討されておりませんが、おそらく通常睡眠に運動を行った場合が最も筋タンパク質の合成が行われると推測できます。


一般的に、よく寝て、よく動くことが体に良いと言われていますが、科学的にも立証されているのですね。

皆さんもこの機会に今一度自分の睡眠を見直してみてはいかがでしょうか。


理学療法士:小田航平


閲覧数:104回0件のコメント
bottom of page